経営戦略における外国人材活用

 厚生労働省の発表によると、平成29年12月の数値をみると、有効求人倍率(季節調整値)は1.59倍となり、前月を0.03ポイント上回りました。新規求人倍率(季節調整値)は2.42倍となり、前月を0.05ポイント上回りました。

 当社の考えとなりますが、この上昇傾向は、今後も続くと予想しています。

(2018年2月14日現在)

一時しのぎなのか!?将来を見越してか?

 歴史的にも稀な人手不足・労働者不足である以上、異常事態ではある。では、この「異常事態」はいつまで続くのか?そして、その先を見越して経営戦略を練り、行動を起こしている経営者たちがいます。

 

 景気は常に波となっています。2020年の東京オリンピック特需がおさまってくれば、下り坂になることも考えられます。

 

 景気がいいと労働者は、土木建設業から製造業に流れ、景気が悪くなるとそれが逆流します。また、中小企業から大企業、地方から大都市への流れも同じとされています。



転換期はいつ???

では、その景気の転換期はいつなのか?

 

このことに関しては、エコノミストや各種評論家たちの予測でしかなく、”当たるも八卦、当たらぬも八卦”です。

 

そもそも、待ちの姿勢を決め込んだ中小企業の体力がいつまで耐えきれるのか?という心配があります。

 

問い合せを頂く企業の中には、一通りの説明を受けて、「やはり外国人を受け入れるのは大変だ」という理由で断念する企業もあります。

 

それは経営判断として然るべき判断だと受入れています。

 

ではその後、その企業に残される”人手不足”という課題は、どうしていくのだろうか?という疑問は残ります。

 

別の選択肢が選ぶのであればいいのですが、「辛抱する」という方法を取るのだと、しわ寄せがくる社員さんたちがかわいそうな気がします。

 

日本の生産年齢人口が減ることは必至です。

 

いつまで日本人だけにこだわるのでしょうか?

また、減り続ける「日本人」を採用・雇用できるという勝算があるのでしょうか???



事例①

S社の方向転換

(土木建設業)

 地盤改良工事や測量調査業を営んでいるS社は、創業から20数年間、常に増収・増益を続けてきました。

 

 この会社の成長要因としては、まず時代が味方をしました。創業当時は3名で始まり、社長自身も現場作業を行っていました。丁度、その頃、建設土木に関する法律に新たな項目が加わり、建設時にある作業が義務付けられることになったのです。それを得意としていたのがS社です。それによって、S社は受注量が増え、一挙に成長を遂げます。 

 

 これまでの20数年間、好景気の時代もあれば、不景気の時代もありました。おそらく、日本全体としては不景気の時代の方が長かったはずです。それでも毎年増収・増益を果たすことができたのは、社員たちの努力はもちろん、S社は積極性と先見性に優れていました。そして、社長の号令によって動く社員たちの実行力が企業競争力となっています。

 

 そして今の時代(平成27年~30年)、日本の景気は良く、大企業ですら人材獲得に困っています。S社にも「人手不足・労働者不足」「現場作業員が足りない」という課題が浮上しました。 

 

 安定した成長を遂げてきたS社にも失敗事例はあります。1つは、中国人を雇用したことによる失敗です。初めての外国人雇用であり、経験・ノウハウがないため、ほぼ管理ができなかった(しなかった)ことが災いしましました。非常に痛い目にあいました。2つ目は、無駄に終わった求人広告費です。経営状態は良いので、なんとか人を集めようと求人広告費に投資しました。かなりの金額だったのですが、ほぼムダに終わりました(金額的には1年で1千万円以上です)。 

 

 そこで当社にお声がかかります。こちらとしても失敗事例の説明を受けてから行なったので、対処方法を練りやすく、やりやすい面は多々ありました。(確実性を高めるための担保、失敗事例への予防策・改善策などを事前に準備することができました。)

 


日本における外国人労働者数推移

 S社は、中国人労働者での失敗もあり、慎重にスタートしました。ベトナム人採用者には、予め注意事項も説明し、約束事もきちんと定めて、まずは少ない人数を受入れて様子をうかがうことにしました。

 

 その結果、特に大きな問題も発生せず、日本人社員たちとも打ち解けているようなので、徐々にベトナム人労働者を増員していくことになります。ただし、この時点ではまだベトナム人の人数が増えることで社内の勢力図が変わってしまうことを気にされていました。

それから2年が過ぎ、S社は決断しました。

ベトナム人を主戦力としよう

 S社はこれを機に、ベトナム人たちへの人事制度にも着手しました。もともと他社に比べて好待遇であったものの、さらに日本語検定の各レベルに合格した場合の資格手当制度を設けたり、日本の正月休みやベトナムの正月休みに大型連休(有給休暇)を取ることを認めたり、と長期雇用・育成を行おうとしている様子がうかがえます。

 

 最終的に、S社の全社員数におけるベトナム人の割合は全社員数の約半数となりました。



躍進するベトナム

 S社に限らず、長期雇用・育成の視点で、ベトナム人を戦力化しようとしている企業は多々あります。

 

 日本に来て日本で骨をうずめたいベトナム人を雇用している企業もあれば、ベトナムに新たな会社・工場を作って、そこの責任者やマネージャーとして育てようとする企業など、やり方は様々ですが有期限雇用の技能実習生の雇用ですら、その先を見越している経営者がいます。そして、そういう経営の方が、ベトナム人たちとの付き合い方を大事にするので、物事がうまく進みます。(その逆の企業は、しばしば問題が発生します。)

 

 初めて「外国人」を受け入れるとなると、不安もあり、慎重にもなります。

 

 最初の1日、1週間、1か月、1年は、とにかく色々なことがあり、まちがえなく大変です。けれど、いつしかそこに慣れて、適応して、"ふつう"になっていくと、企業としての選択肢は広がります。

 

(実際、2年目からは言葉の障害や衝突はほぼ無くなります。そうなると、個人や個別企業における出来事に関する問題であり、協調しようとする話し合いで解決できることがほとんどです。)

 

 この先、どんな時代が訪れるかはそれぞれが予想するしかありませんが、選択肢が多い企業と、(日本人にこだわり)限定されている企業とであれば、競争力の差は歴然であると考えます。

 

 経営戦略をどう策略するか。

 戦術として、「海外人材」を含めるか。

 

 「人手不足」という顕著な課題がある時代だからこそ、人事を含めた経営手腕が試されていると思います。

当然、優秀な人物から引き抜かれていきます。求人・採用・雇用継続...すべてにおいて先手を打つ企業が強い!



新たな戦略に「海外人材」「ベトナム」という単語が加わるのであれば、ぜひお声掛け下さい。